〜母指CM関節症について 若杉院長インタビュー〜
「ペットボトルのフタを開けようとするとズキッと痛む」「タオルを絞るのがつらい」
それ、年齢や疲れのせいと思っていませんか?
実は、こうした症状の背景には「母指CM関節症」という疾患が隠れていることがあります。
今回は、母指CM関節症の症状や治療法について、わかすぎ整形外科・手の外科クリニック 院長の若杉先生にお話を伺いました。
Q:どんな症状があるんですか?
若杉院長:
よくあるのは、ペットボトルのフタを開けると痛い、洗濯バサミがつらい、タオルを絞るとズキッとする、といった症状です。
家族に手伝ってもらって何とか過ごしている方も多いですが、ズボンの上げ下げのような“人に頼れない”動作で痛みが出てくると、日常生活そのものに支障が出てきます。
そうしたときに、手術を前向きに検討する方が増えます。
Q:すぐに手術になるわけではないんですね?
若杉院長:
はい。母指CM関節症は保存療法が原則です。症状の程度や生活への支障に応じて段階的に治療を行います。
Q:保存療法にはどんな方法がありますか?
若杉院長:
まずは内服薬や外用薬で様子を見ます。それでも痛みが続く場合には、装具療法やリハビリに進みます。
当院には母指CM関節症の術前・術後の患者さんを多く見てきたハンドセラピストが在籍しており、装具や手の使い方の指導も含めてサポートしています。
Q:注射で治りますか?
若杉院長:
注射で治るか、はよく頂く質問ですね。
注射は「治す」ものではなく、炎症や腫れを一時的に抑える対症療法です。
2〜3回までの注射で強い痛みをしのぎますが、症状が繰り返すようであれば手術を検討します。
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日帰り手術を行う専用手術室
Q:どんな方が手術の対象になりますか?
若杉院長:
保存療法を行っても日常生活に支障がある方が対象になります。
先ほどの症状のところでも触れましたが、「人に頼れない動作」での痛みがある場合は、手術を前向きに考えることが多いです。
Q:どんな手術ですか?
若杉院長:
当院では母指CM関節形成術を行っています。関節を固定せず、安定性を保ちながら痛みの原因を除去する手術です。
当院では専用手術室にて日帰り手術を行っております。CM関節に対する関節形成術であれば、だいたい40分から50分の手術時間で終えることができます。
2024年には20件のCM関節形成術を行いました。数字だけ見ると少なく見えるかもしれませんが、当院では投薬、装具、リハビリでの手の使い方の指導などを含めて、粘り強く保存療法を行い、改善ないし症状とうまく付き合えるようになる方が多く、最終手段としての手術を行う患者さんは「厳選された20件」だと考えています。
手術時の皮膚切開マーキング。約2〜3cmの切開で行います。
Q:手術後はどのように回復していくのですか?
若杉院長:
当院では術後の固定はシーネで1週間のみです。装具を使う方はほとんどいません。
6か月を目安に痛みや腫れが改善していきますが、術前に強い痛みがあった方は2〜3か月で「楽になった」と実感されることもあります。
術後の外固定(シーネ固定)1週間の様子。
母指以外の指は制限なく動かせるほか、母指のIP関節(第一関節)もよく動かす必要があります。
術後のリハビリではこの関節をしっかり動かすことが大切です。
Q:リハビリは必要ですか?
若杉院長:
はい。術後のリハビリは非常に重要です。
当院には母指CM関節症の患者さんを多く見ているハンドセラピストが在籍しており、術後の使い方や回復のサポートも万全です。
Q:最後に、読者へのメッセージをお願いします。
若杉院長:
親指は、日常生活のあらゆる動作に関わる大事な指です。
「このくらい年齢のせいかな」と我慢してしまう方も多いですが、保存療法で十分改善できる方も多くいらっしゃいます。
手術も必要な方にとっては有効な選択肢です。
どうにもならないと感じたら、無理せず一度ご相談ください。